治療方法
ロボット支援手術
【対象疾患】結腸がん、直腸がん
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腹腔鏡手術は小さな創で手術が可能な「からだに優しい手術(低侵襲手術)」として本邦では標準治療となりましたが、近年手術支援ロボットが導入され、広く普及しつつあります。外科分野では1990年代から腹腔鏡手術が導入され、有用性が確認されてきましたが、腹腔鏡手術のさらなる向上を目的として、手術支援ロボットが開発されました。手術支援ロボット「ダヴィンチ」は、1980年代からアメリカで開発が進められ1999年に完成し、2000年より手術支援装置として利用が始まりました。 ロボット支援手術では、3次元内視鏡による拡大視野により、おなかの中の詳細な情報を得ることができます。また、ロボット鉗子は緻密な手の動きを正確に再現することが可能であるため、これまでの鏡視下手術以上に低侵襲で安全や完成度の高い手術が施行できます。特に難易度の高い骨盤内手術(直腸がんに対する超低位前方切除術、括約筋間直腸切除術、側方リンパ節郭清)でロボット支援手術は有効です。
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当院では2021年に手術支援ロボット「第4世代ダヴィンチXi」を設置し、以降内視鏡外科学会技術認定医の下、直腸がん・結腸がんに対し積極的にロボット支援手術を導入しています。今後、医師・看護師・臨床工学士が綿密に連携し、低侵襲手術の普及と技術のさらなる向上を目的として、ロボット支援手術を積極的に導入するととともに、スタッフの教育及び臨床研究を推進して参ります。
腹腔鏡手術
【対象疾患】結腸がん、直腸がん、直腸脱、急性虫垂炎、下部消化管穿孔、汎発性腹膜炎など
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腹腔鏡手術は創が小さく、低侵襲であることに加え、その拡大視効果により精緻な手術が施行できるメリットがあります。当科では内視鏡外科学会技術認定医のもと、大腸がんのみならず、直腸脱、急性虫垂炎、大腸憩室穿孔による汎発性腹膜炎などの良性疾患にも腹腔鏡手術を行っています。
切除不能大腸がんに対する全身化学療法
【対象疾患】結腸がん・直腸がん
切除不能と診断された結腸・直腸がんに対しては、大腸癌治療ガイドラインに則った全身化学療法を導入し、生命予後の向上に努めています。
切除不能と診断されても、化学療法が奏効した場合(がんが縮小した場合)、根治手術が可能となることがあります。
全身化学療法導入にあたっては、緩和ケア部門と連携し、患者さんのQOL(生活の質)に配慮したケアを提供していきます。
便失禁などの大腸機能性疾患や骨盤臓器脱に対する治療(骨盤機能外科)
【対象疾患】便失禁、慢性便秘症、直腸脱など
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近年排便や排尿に関する機能性疾患が問題となっています。日本人の場合、便失禁の患者さんは約500万人と推定されています。これらの疾患は高齢の方に多いといわれていますが、直腸や前立腺の手術を受けた患者さんのなかにも排便障害や排尿障害が起こることがあり、その場合QOLが大きく損なわれてしまいます。 当科では、骨盤の中の臓器である直腸、膀胱、子宮や骨盤の底にある筋肉群(肛門挙筋・肛門括約筋など)の機能障害により引き起こされる便失禁、便秘、骨盤臓器脱(直腸脱)などの疾患を総合的に診療し、専門的な治療を行っています。便失禁や直腸脱に対しては、薬物治療で軽快しない場合、外科的治療の適応となります。
便失禁に対する外科的治療として仙骨神経刺激療法(SNM)があり、2017年に発刊された「便失禁診療ガイドライン」において、有効な治療法として推奨されています。一時的な刺激装置で約2週間刺激し、効果が認められたときのみ永久的な刺激装置を腰背部の皮下に植え込みます。仙骨神経刺激療法にて約70%に便失禁改善効果を認めています。 直腸脱に対する外科的治療として、経肛門的手術と経腹的手術があり、脱出の程度により術式を決定します。経腹的術では低侵襲治療として、腹腔鏡下直腸固定術(腹腔鏡下に直腸をお腹の中に引き上げ固定する手術)を行っています。