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温熱化学療法

腹膜切除は広範な腹膜の剥離が行われるので、術後の癒着は高度である。癒着が起こってからの腹腔内化学療法は薬剤分布が不十分になる。しかし、手術中や術後早期から行う化学療法は薬剤を腹部全体に行きわたらせることができ、腹腔内遺残癌細胞がもっとも少ない時に行うため、治療効果が大きいと考えられる。また、残した腹膜の微小転移や、剥離面に新たに接着したがん細胞を治療するのに有用である。腹膜切除を行っているほとんどの施設では術中温熱化学療法を行っている。43度の温熱療法単独でもがん細胞を殺す作用がある。試験管内の試験では43度・1時間の温熱療法単独で1時間で90%の殺細胞効果がある。また、制癌剤と併用すると殺細胞効果はさらに上昇する2,14)。Verwaal らは41-42℃の加温した腹膜還流液3リットルにMMC 17.5mg/m2を加え60分間還流している15)。
Glehen らはMMC 0.7mg/Kg+CDDP 1mg/Kg 16)、台湾医科大学ではMMC 30mg+CDDP150mgで温熱化学療法を行っている14)。我々も胃癌の腹膜播種再発にたいする予防的温熱化学療法は有意に生存率を改善させたと述べている 2)。42℃の加温(+MMC+CDDP)が37℃(+MMC+CDDP)の環流に比べ有意差をもって生存率を改善させたことから、温熱が腹膜再発予防に有効であるとしている17)。HamazoeらもMMC+腹腔内温熱還流は腹膜播種の予防に有効であることをRandomized trialで示した 18)。Verwaalらは大腸がんの腹膜播種に温熱化学療法が極めて有効であることを報告している 15)。特に播種をすべて切除し温熱化学療法を施行した例では3年生存率が90%を示したとしている。
当院で治療した489例の胃癌では温熱化学療法施行(307例)の5年生存率は8.6%で非施行例(182例)の3.5%より優位に良好であった。大腸癌では温熱化学療法施行例(162例)の5年生存率24.6%、非施行例の13.7%より有意に良好であった。803例の腹膜偽粘液腫では温熱化学療法を行った例(468 例)の7年生存率は62.2%で行なわなかった例(335例)のそれ(26.4%)に比べ有意に良好である 26)。その他の疾患でも温熱化学療法施行例は生存率が改善された。
以上の治験をもとに腹膜切除終了後、遺残した腫瘍を化学療法で治療し洗い流し、温熱化学療法を行っている。
方法は43℃に加温した生理食塩液を4リットル準備し、胃癌・腹膜中皮腫・膵癌・卵巣癌ではCDDP 20mg/m2/L+タキソテール 30mg/m2、大腸癌ではMMC 4mg/m2/L、オキザリプラチン100mg++5FU 500mgを生食水4L溶解し、40-60分間腹腔内を還流する。